2024.10.22 09:41「原始林」の誌面より(2024年10月)2024年10月号 ≪ 連載 ≫ 歌集散策 井原茂明 吉川宏志歌集 『雪の偶然』 ( 2 ) 吉川宏志は1969年生れ。宮崎県出身。塔短歌会主催。前川佐美雄賞、寺山修司 短歌賞などを受賞。歌集『雪の偶然』で第58回迢空賞を受賞。2015年から2022年 までの作品、555首が収めてある。今回はその(2)である。 基地の前の青きテントに入りたり鈍器のごとく雨は落ちくる (キャンプ・シュワブ) 沖縄の土に臥す少女映されて涙は顔を横にながれる ( 〃 ) 紫陽花はどんな壁にも凭れおり占領のながくながく続きて ( 〃 ) 鉛筆の線少しあり挫折せしをふたたび読みぬハンナ・ア...
2024.09.18 10:38「原始林」の誌面より(2024年9月)2024年9月号 ≪ 連載 ≫ 歌集散策 井原茂明 吉川宏志歌集 『雪の偶然』 ( 1 ) 吉川宏志は1969年生れ。宮崎県出身。塔短歌会主催。前川佐美雄賞、寺山修司短歌 賞などを受賞。歌集『雪の偶然』で第58回迢空賞を受賞。2015年から2022年までの作 品、555首が収めてある。今回はその(1)である。 黒ずみしものが木目に滲みいるアウシュヴィッツの木靴置かれつ ( 鵜 ) 幼な子が見しものは絵に残されて踊るごとし銃に撃たれたる人 ( 〃 ) 京ことば、東言葉のまじりつつ実朝と寝し妻をおもえり (実朝の墓) 裸木をくぐりぬけゆく雪が見ゆ あやつらるるご...