2025.09.18 01:24「原始林」の誌面より(2025年9月)2025年9月号 ≪ 連載 ≫ 歌集散策 井原茂明 小島ゆかり『はるかなる虹』(5) 小島ゆかりは1956年生れ。コスモス短歌会の選者、編集人。『はるかなる虹』は第16歌集である。2020年歳晩から2024年新春までの作品のなかから468首を収めている。 今回はその(6)について紹介する。 いま風の向きが変はって横顔の鳥、横顔の樹木うつくし (いま風の向きが変はって) 知らぬ間に世はすりかはり小綬鶏がChatChatGPTと鳴く ( 〃 ) 街路樹の若葉のそよぎなまめきて両性具有の夜が降りくる( 〃 ) 存在の断片が時の断片が過ぎゆける雨のスクランブル交差点(...
2025.08.28 09:04「原始林」の誌面より(2025年8月)2025年8月号 ≪ 連載 ≫ 歌集散策 井原茂明 小島ゆかり『はるかなる虹』(5)小島ゆかりは1956年生れ。コスモス短歌会の選者、編集人。『はるかなる虹』は第16歌集である。2020年歳晩から2024年新春までの作品のなかから468首を収めている。今回はその(5)について紹介する。スリッパやコンセントにも霊が棲む秋なり翳と光はおなじ (なにも還らず)おもはない事も大切たらちねをおもへばかなしみにまつしぐら ( 焼 肉 )マンホールの蓋の重さの冬の月 人は孤独にきまつてゐるさ ( 〃 )窓けぶる雪の朝はなまなまとからだのなかに心臓がある ( 心 臓 )フランスパンをレタスざくつとはみだして...
2025.07.30 02:31「原始林」の誌面より(2025年7月)2025年7月号 ≪ 連載 ≫ 歌集散策 井原茂明 小島ゆかり『はるかなる虹』(4) 小島ゆかりは1956年生れ。コスモス短歌会の選者、編集人。『はるかなる虹』は第16歌集である。2020年歳晩から2024年新春までの作品のなかから468首を収めている。今回はその(3)について紹介する。酷熱の夜に沈めり老魚なる巨大熱帯魚首都東京は (真夏のひかり)空襲の夜空はどんな明るさか地下階段に夕映えとどく ( 〃 )はじまりもをはりも知らずだれよりもわれははるかなる真夏のひかり ( 〃 )シャワー浴びながら拡がる夢想界 アサギマダラは海をわたれる ( 夢想界 )物音のぼ...