2026.09.21 07:48「原始林」の誌面より(2026年9月)2026年9月号 ≪ 連載 ≫ 歌集散策 井原茂明 永井陽子歌集『小さなヴァイオリンが欲しくて』(2)この歌集は遺歌集である。「短歌人」の有志によって、永井が48歳で亡くなった9か月後に発行された。今回はその「2」について紹介する。木の葉梟このごろ不調つやつやと青葉若葉は照りかげりつつ ( 木の葉梟 )たれを呼び呼ばるるこゑか人の世は係り結びの法則に似て ( 係り結び )生きることにすこし疲れたたましひの銀の穂波のすすき もう秋 (モンキースパナ) 自転車のネジひとつ締め紺碧の空へ投げやるモンキースパナ ( 〃 )すこしだけこころの弱さ見せてゐる医師なればまた異性にあれば ( 風 祭 )この...
2026.08.21 09:13「原始林」の誌面より(2026年8月)2026年8月号 ≪ 連載 ≫ 歌集散策 井原茂明 永井陽子歌集『小さなヴァイオリンが欲しくて』(1)この歌集は遺歌集である。「短歌人」の有志によって、永井が48歳で亡くなった9か月後に発行された。今回はその「1」について紹介する。誰かくる誰かたしかにこの家へ来るぞと夜の笛吹きケトル (花吹雪)1993年雑草のままに埋もれてなんとせうアメリカオオバコぐんぐん伸びる(大曲) 々くたびれたたましひたちのつばさにも似たるくつした星空に干す(くつした)々父の鋸、はがねのにほふ曲尺も母のじようろも月光の中 (引越し騒動)1994年コンドルは甲(きのえ)の戌の禿頭あたたかき陽に晒してをりぬ(コンドル)々エレベーターの底にこごまり拾はむ...
2026.07.18 02:09「原始林」の誌面より(2026年7月)2026年7月号 ≪ 連載 ≫ 歌集散策 井原茂明 永井陽子歌集『てまり唄』(3)『てまり唄』、今回はその「3」について紹介する。にんげんの姿かたちは流れゆく雲にも如かず 空の歳時記 ( 空の歳時記 )ぽわぽわとうつけた風が吹くからに肩へ触れくる白はなみづき ( てまり唄 )人生の冬の季節といふ季節生きてつくづく身はほそりたり ( 〃 )光の矢つがへてぎりと引きたれば海は紺青の壁ひるがへす ( 〃 )日曜はゆめの領域にて暮らしてのひらなどに書く「のりしろ」と( 乗りしろ )こころねのわろきうさぎは母うさぎの戒名などを考へてをり ( 兎 国 )鹿たちも若草の上にねむるゆゑおやすみ阿修羅お...