2025.01.26 02:21「原始林」の誌面より(2025年1月)2025年1月号 ≪ 連載 ≫ 歌集散策 井原茂明 吉川宏志歌集 『雪の偶然』 ( 5 ) 吉川宏志は1969年生れ。宮崎県出身。塔短歌会主催。前川佐美雄賞、寺山修司短歌賞 などを受賞。歌集『雪の偶然』で第58回迢空賞を受賞。2015年から2022年までの 作品、555首が収めてある。今回はその(5)である。 うしろむく人の眼鏡ははみ出せり冬の夕焼そこに溶けゆく (うしろむく人) 道すべて封鎖されたる武漢にも梅咲きおらむ映されざりき ( 〃 ) ゆうぐれに見えざるものを洗いゆく指のあいだに指を入れつつ (みなし子、水面) 仏像を見ぬまま春は過ぎゆけり指のあいだに滲める闇も ...