2024.05.27 05:34「原始林」の誌面より(2024年5月)2024年5月号 ≪ 連載 ≫ 歌集散策 井原茂明 森垣岳歌集 『遺伝子の舟』 (1) 森垣岳は「ヤママユ短歌」に所属し、兵庫県の農業高校の教師である。 第二回現代短歌社賞を受賞している。歌集『遺伝子の舟』について紹介する その(1)である。 湿り気の残る堆肥を一斉にまけば華やぐ大地の匂い (栽培実習) 新月の夜更けに土をかき分けてゾンビのごとき胡瓜の発芽 ( 〃 ) 虫喰いの胡瓜の苗を捨てながら叶わぬ恋の歌をうたえり ( 〃 ) 産みたての朝の光を培養し夜毎グラスに入れて飲むべし (生物工学) パンジーの幾万本も廃棄されて週末明るい死で満ちている ( 〃 ) 草引きを終えた生徒が振り返り「先生僕...
2024.05.06 03:18「原始林」の誌面より(2024年4月)2024年4月号 原始林賞受賞作品 「乳 粥」 雅 陽 「夢のちりぢり」 千葉 悦子≪ 連載 ≫ 歌集散策 井原茂明 奥村知世歌集『工場』(5) 奥村知世は結社「心の花」に所属し、歌集『工場』は、奥村の第一歌集である。 この歌集をもって第28回日本歌人クラブ新人賞を受賞している。五回に分けて 紹介するその(5)「育休」と名簿に斜線は引かれつつ斜線のままの後輩がいる ( Sサイズ )歩くたび腰に吊した工具らがカチャカチャ鳴らす現場の音符 ( 工事許可証 )バスツアーに息子の席を買ってやり子...