2023.11.20 23:29「原始林」の誌面より(2023年11月)2023年11月号 ≪ 連載 ≫ 歌集散策 米川千嘉子歌集 『雪岱が描いた夜』 (4) 井原茂明 歌集『雪岱が描いた夜』は、米川千嘉子の第十歌集である。2018年から 2021年の作品。日々新しい眼差しをもって時代と人間をみつめたいという 米川である。今回はその(4)について紹介する。ああ、といふ息の温さを溜めながらマスクのわれは桜をあふぐ (マスクと春)引きこもりの人も気楽にならむ時代といふこゑはうすいテレビのなかに(ガチャポン)コロナ禍に手放してゆく交際の一つ惜しまずしら萩の風 ( 認め印 )引き出しの旅の小瓶を振ってみる〈象潟の瓶〉〈油津の瓶〉 ( 〃 )千代田村柏はさびし重吉が...
2023.11.01 03:39「原始林」の誌面より(2023年10月)2023年10月号 ≪ 連載 ≫ 歌集散策 米川千嘉子歌集 『雪岱が描いた夜』 (3) 井原茂明 歌集『雪岱が描いた夜』は、米川千嘉子の第十歌集である。2018年から 2021年の作品。日々新しい眼差しをもって時代と人間をみつめたいという 米川である。今回はその(3)について紹介する。ドローンは〈貧者の武器〉なり貧者にも持てるといふこと希望だといふ (希望、無限)不眠の夜はいのち濃き夜とおもふべし渦巻く悔いのなかの若き日 ( 不眠 )風邪ひけばひとの悲しみわが悔いも寸馬豆人あたたかき冬 (寸馬豆人 )一本足でどろどろの沼に立つわれはさびしいといふ声にこたへず ( 〃 )鳥たちがもてる磁石をう...