2022.02.11 02:11「原始林」の誌面より(2022年2月)2022年2月号 ≪ 連載 ≫ 歌集散策 井原 茂明 高野公彦歌集 『 水の自画像 』 ( 1 ) 高野公彦は宮柊二に師事し今は「コスモス」の編集人であり朝日歌壇の選者である。 工業高校を卒業し職に就いていたが退職し、東京教育大学文学部に学んでいる。 歌集『水の自画像』は高野の第十六歌集であり2019年1月(令和元年)から 2021年5月(令和3年)までの作品群で構成されている。今回は5回に分けて紹介する。 ふるさとは帰る家なし伊予の海も伊予びとたちも優しきものを (天使の滝) 家々に極楽落しありしころスマホ無かりき乞食の居りき (極楽落し) 焼いて、煮て、炒めて、漬けて、茄子を食ふ変格...
2022.02.11 01:59「原始林」の誌面より(2022年1月)2022年1月号 特別作品 白楊集 17氏 各15首 ≪ 連載 ≫ 歌集散策 井原 茂明 石牟礼道子歌集 『海と空のあいだに』 ( 4 )母の背はうろことなれりかげろふにかさねて彼岸の灸をすえつつ(指を流るる川)めしひたる少女がとりおとす鉄の鍋沈めば指を流るる冬の川 ( 〃 )おとうとの轢断死体山羊肉とならびてこよなくやさし繊維質 (海と空のいだに)樺美智子をかかへつづける地の窪み集会終へて藷すこし植ゆ ( 鴉 )頸ほそき抗夫あゆみくるそのうしろ闇にうごきゐる沼とおもへり( 廃 駅 )石の中に閉じし言葉をおもふなり「異土のかたゐ」のひとりいま死ぬ ( 〃 )いちまひのまなこあ...