2023年12月号
≪ 連載 ≫
歌集散策
奥村知世歌集『工場』(1)
奥村知世は結社「心の花」に所属し、歌集『工場』は、奥村の第一歌集である。
この歌集をもって第28回日本歌人クラブ新人賞を受賞している。今回は四回に
分けて紹介する。
京葉は京浜よりものんびりとガスタンクたちも穏やかな顔 (作業着の色)
女でも背中に腰に汗をかくごまかしきかぬ作業着の色 ( 〃 )
実験室の壁にこぶしの跡があり悔しい時にそっと重ねる ( 〃 )
逢い引きをいつか誰かがするだろう工場の隅の廃材置き場 ( フレコン)
油圧式フォークリフトはカクカクと冬の寝起きのオイルはかたい( 安全靴 )
カチカチと雪降るようにクリックが午後の静かな会議に積もる ( 〃 )
≪原始林大会≫
原始林大会の記
佐藤 美幸
互選高点歌
いつかまた使ふの「いつか」はいつ来るの謎のねぢ釘たまこむ夫よ 佐藤美幸
紐かけたままの本積む古書店の匂は昭和 胸に吸ひ込む 三浦公佐子
自転車のパンク直してくるる夢ワイシャツの袖を捲る夫ゐて 田家万里衣
帽子押さへ上着煽られ草なびく写真に見えざる風がうつれり 大朝暁子
玄関に簾下ろして川の字に昼寝せし日のポンポンダリア 渡辺恵美子
麦畑にみどりの波の寄せ返すあの頃ひどく凹んでゐたつけ 鷲巣純子
足のみになりて立ちたる記念塔に最後の夏の蟬の声降る 一井美香
娑婆の空気吸いましょうと退院の父をいざなう回転寿司に 川村悦子
善光寺ビンズルさまは撫でられておん目も与へつるり木目のみ 梶原佑倖
山径に桜大樹の倒れゐて「またがないでね。まだ生きてます」 有田絢子
スメタナを好める我の枕辺にベームが指揮のモルダウ流る 竹田絹子
スーパーに「昭和六年豆腐」あり亡父の生年そつと手に取る 磯石万里
選者賞
各選者 二名 十名選出された
≪ 寄稿 ≫
最近の総合誌より
千葉 悦子
中山周三の歌一首鑑賞 『陸橋』から
大口 ひろ美 平間 進
【 原始林本社歌会のご案内 】
日時 12月24日(日) 午後1時
ところ 厚別区民センター(厚別中央1-5)
詠草 雑詠 1首(ハガキ)
送り先 004-0022 札幌市厚別区厚別南1-14―10―703
一井 美香
連絡先 090-7657―5111 (ショートメール限定)
締切 12月20日(水)厳守(土曜、翌日配達がなくなりました。
余裕をみて詠草をお送り下さい)
会費 300円
初心者の方も遠慮なくご参加ください
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