2025.11.05 23:33「原始林」の誌面より(2025年10月)2025年10月号 ≪ 連載 ≫ 歌集散策 井原茂明 永井陽子歌集『なよたけ拾遺』 永井陽子は1954年生れ。2000年死去、享年48歳。歌集に『樟の木の歌』、『ふしぎな楽器』,『モーツァルトの電話帳』、『小さなヴァイオリンが欲しくて』などがある。『なよたけ拾遺』は永井陽子二七歳のときの歌集である。若くして父を失い、母と二人の暮しの中、私性を遠ざけ非日常の世界に韻を刻む。石川美南編の『永井陽子歌集♯』より選びだした。今回はその(1)について紹介する。 いつの世の昔語りの竹の里 をさなきひとのまみに照る月 (なよたけ拾遺) わがかげをわれらたがひに見失ふ野にほうほうと春を呼ぶこゑ ( 〃 ) 逝く父をとほくおもへ...