2025.02.18 01:06「原始林」の誌面より(2025年2月)2025年2月号 ≪ 連載 ≫ 歌集散策 井原茂明 吉川宏志歌集 『雪の偶然』 ( 6 ) 吉川宏志は1969年生れ。宮崎県出身。塔短歌会主催。前川佐美雄賞、寺山修司短歌賞 などを受賞。歌集『雪の偶然』で第58回迢空賞を受賞。2015年から2022年までの 作品、555首が収めてある。今回はその(6)である。えごの花白く吊らるる枝のあり雨の伝わる路となりつつ ( えごの花 )陽を追いて読書したりし床黒く本居宣長旧居に入りぬ ( 十字鈴 )目薬もまた冷えてゆく秋の夜のゆびにまぶたをおしひろげつつ ( 〃 )ひらくたび水が灯れり冷蔵庫の小さきを据えて娘は住みはじむ ( 焼餅坂 ...