2022.05.23 11:08「原始林」の誌面より(2022年5月)2022年5月号 ≪ 連載 ≫ 歌集散策 井原 茂明 高野公彦歌集 『 水の自画像 』 ( 4 ) 高野公彦は宮柊二に師事し今は「コスモス」の編集人であり朝日歌壇の選者である。 工業高校を卒業し職に就いていたが退職し、東京教育大学文学部に学んでいる。 歌集『水の自画像』は高野の第十六歌集であり2019年1月(令和元年)から 021年5月(令和3年)までの作品群で構成されている。今回は4回めを紹介する。 コロナ禍で消えた無数の灯の一つ神保町の飲屋〈酔の助〉 ( 時の疫 ) 餓鬼の眼が、観音の眼がひそやかに光る六月の洞窟の暗闇 ( 〃 ) 疫病あれどこの世寧けし鳴きかたの模範のやうに鳴く...