2021.10.24 05:18「原始林」の誌面より(10月)2021年10月号の誌面より 原始林七十五周年記念大会ご案内≪ 連載 ≫ 歌集散策 石牟礼道子歌集『海と空のあいだに』 ( 2 ) 石牟礼道子が短歌を始めたのは昭和18年、16歳のときだった。数年後のエッセイを記述する。「短歌は私の初恋。常に滅び、常に蘇るもの。短歌はあと一枚残った私の着物。このひとえの重さを脱いで了えば私は気体になってしまうでしょう。今暫くこの薄衣につつまれて私を育みたい」。 そして、石牟礼が短歌を離れたのは昭和40年、38歳のときである。その事由のひとつは、歌誌「南風」の歌友である志賀狂太の自裁であり、もうひとつが、水俣問題に関わりはじめて、前途の容易ならざることが予想されてきたこと、また短歌的表現では言い尽くせない、と...