2021年10月号の誌面より
原始林七十五周年記念大会ご案内
≪ 連載 ≫
歌集散策
石牟礼道子歌集『海と空のあいだに』 ( 2 )
石牟礼道子が短歌を始めたのは昭和18年、16歳のときだった。数年後のエッセイを記述する。「短歌は私の初恋。常に滅び、常に蘇るもの。短歌はあと一枚残った私の着物。このひとえの重さを脱いで了えば私は気体になってしまうでしょう。今暫くこの薄衣につつまれて私を育みたい」。
そして、石牟礼が短歌を離れたのは昭和40年、38歳のときである。その事由のひとつは、歌誌「南風」の歌友である志賀狂太の自裁であり、もうひとつが、水俣問題に関わりはじめて、前途の容易ならざることが予想されてきたこと、また短歌的表現では言い尽くせない、ということが見えてきたからだという。
『海と空のあいだに』及び、未収録短歌を含めて四回に分け紹介する。
今回は(2)、2回目の紹介である。
狂いゐる祖母がほそほそと笑ひそめ秋はしづかに冷えてゆくなり
泡の声 (昭和26年~27年)
寄り合ひてそのひとときをさざめける泡の声きけば泡の声かなし ( 〃 )
おほらかに生きゐよといふ強き声あたたかく欲し肩のあたりに
わだちの音 (昭和27年)
墜ち行くは安けきに似つ不知火の凪にゆるゆるくるめく落陽 春蟬( 〃 )
云い度いこと云へばなほさらさみしきに花を千切る様にならべる言葉
春衣 (昭和29年)
倚れる樹はみな裸木となりゆけば爪立ちあへぐ呼ばるる方に ( 〃 )
≪通巻九百号記念企画≫ アンケート 三十五氏
≪ 寄稿 ≫
最近の総合誌より 松野 孝
歌ができるとき 三上 まゆみ
中山周三の歌一首鑑賞 『陸橋』から
加藤 民子
【 原始林75周年記念大会ご案内 】
日時 令和3年10月17日(日) 受付開始12時00分
会場 新札幌アークシティホテル
行事 総合歌会 13時~17時30分
大会費 3000円(写真不要の場合は2000円)
* 互選高点歌賞・選者賞があります
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