2020.09.17 14:31「原始林」の誌面より(9月)2020年9月号の誌面より ≪ 連載 ≫ 歌集散策 藤島秀憲歌集『 ミステリー 』(1) 井原茂明 『ミステリー』は藤島秀憲の第三歌集である。藤島は「心の花」に所属し、第十九回寺山修司短歌賞を受賞している。そしてこの『ミステリー』で第十八回前川佐美雄賞を受賞した。 白梅のかおりにほっと立ち止まる三年過ぎて人は変わりぬ ( なにかと ) 父が建てわれが売りたりむらさきの都わすれの狂い咲く家 ( 〃 ) 医学生が父の解剖する午後をチラシ配りに歩くわたしは ( 蒸発の夏 ) おかあさん痛そうだねと頬の痣に触れしは五歳か四歳のわれ ( こんな日に ) わが部屋を君おとずれん訪れん座布団カバー洗うべし洗うべし...